嘉村 孝著「武士道と、憲法」(元就出版社)について

歴史と武士道精神の好きな人にお勧めです。

著者の嘉村氏はトラじいこと本ブログ編集者の中学時代の同級生です。ということは同学年でともに二十世紀の前半から後半への折り返しの頃にこの世に生を受けたことになります。
当時の世相は先の東京オリンピックを中2の時に経験し、大学受験の時は70年安保で社会は混乱の最中にありました。今では想像もできないほどの不安定の思想的な迷路の中ではなかったかと思います。学生運動のため東大の入試が中止された年でもありました。
沖縄はまだアメリカの統治下にあり、ベトナム戦争は泥沼化に陥っていました。つまり自分たちの青春時代は社会的な混沌のただ中であったように思います。

今から考えると小・中・高と戦後の民主化教育のおかげで機会均等や平等性は担保されていましたが、精神的なバックボーンが欠如していた時代ではなかったかと思います。それぞれが自分たちで探し求めていかなければならない時代でした。

社会や大人への不満の捌け口を求めて左翼の学生運動に走った人や、それとは対称的にいわゆる民族派と言われる人たちが議論を戦わせていました。しかし大多数はノンポリと言われた人たちで政治的な思想信条から距離を置いていました。自分も政治的にはそれらの一人と言えます。
ただし、社会を新しい日本を構築するためにわずかでも役に立ちたいと内面では考えていた人も多くいたように思います。昭和の若者はそういう考え方は普通であったと思います。ただそれを表面に出さなかったのではないでしょうか。

しかしそのような昭和の若者が結果として今日の二十一世紀を形づくったとすれば、彼らの思いは実らなかったと言わざる得なくなります。自分たちは新世紀に期待しすぎたのかもしれません。

ここで本ブログの本題に戻りますが、書名の副題に「真の武士道を現代に生かすには」とあります。筆者の嘉村氏は裁判官から弁護士に転じて長く社会に貢献していますが、法律家として憲法と武士道をどのように考えるかという視点で本書は書かれています。

日本人の心象風景として武士道をどのように捉えることができるかというのは新しい視点のように感じます。何より彼の歴史への造詣の深さには驚かされます。そして一番に特筆されるべきは日本文化の中の「武士道」と中国や東洋、世界と視野を広げてその関連性を詳細に分析していることです。これは驚嘆するほどの知識量と歴史愛・武士道愛がなせるものかなと感じ入りました。

新しい発見も多々ありました。特に先の大戦(太平洋戦争)の歴史観は知的財産の宝庫のようです。

本書の最後の章は憲法改正の問題に触れられています。法律家としての嘉村氏の基本的立場がわかるのではないでしょうか。いずれにせよ「武士道」は日本の歴史に深く関わっていると言うことが良くわかる書物です。知的財産として価値が高いと思います。
さらにどんな人にこの書を勧めたいかというと高級官僚の人たち、特に犯罪的な行為を指示しておいて責任をとらずに保身に走る官僚の方々及び困難に直面して最後は逃げてしまうような政治家の方々にも是非読んで頂きたいところです。