浅田美代子著「ひとりじめ」(文藝春秋刊)を読んで

タイトル:浅田美代子著「ひとりじめ」

筆者の浅田美代子さんは自分とほぼ同時代を生きてきた芸能人(昭和のアイドル)です。

主にテレビドラマで活躍されて、デビュー当時は「赤い風船」という歌がヒットしました。先日ラジオで流れていましたが、改めて聴くと当時のことが蘇りました。いい歌です。当時のプロデューサーの能力の高さと作曲家、編曲者※の巧みさが感じ取れます。(筒美京平さんです。作詞は安井かずみさん)

読み進めていくと一人の人間の魂の成長の過程が手に取るように理解できます。私自身の人生を重ねることで、人物や物や出来ごとを通して、それらを縁として現在までたどり着くことができたと実感させてくれます。

昭和の時代のテレビ文化が全盛だった頃。テレビドラマが人々の生活に寄り添っていて、登場する俳優さんたちも身近な存在に感じられた時代です。彼女は隣の美代ちゃんでした。

平成の時代になって、バラエティー番組がテレビの一翼を担うようになって、浅田さんはその天然キャラがバラエティー番組で欠かせない人気となりました。独特の存在感がありました。努力しなくても番組に必要とされる存在は貴重です。

私の大学時代にサークルの同期の女の子に浅田美代子のファンだと言ったら「そのことは女の子の前ではあまり言わない方がいいよ」と諭されました。理由は遊んでいるからということのようでした。本書を読んで思うと彼女は正直すぎるくらいに正直な生き方をしてきたのだと見方を変えました。

多分、家がとても厳しかったことが原因のようですが、彼女の父親が別の人格だったら彼女は違う人生を歩んでいただろうと感じました。

人の縁は本当に面白いです。家族の影響で人生が変わり、家族ではない樹木希林さんと巡り会って大きく人生が変わっていく。血のつながりと魂のつながりはどちらが重いのか考えさせられます。

多分どちらも重いのだろうと思います。ただ言えることは「人は巡り会うべくして出会う」という事実です。魂の出会いは必然なのでしょうか。浅田さんの本を読んでいると必然と感じざるを得ません。そして、何より彼女の自然体でいられる強さと素直さ、そして何より自分に嘘をつかない(もちろん人にも)正直さがいいのだと思います。

それらの底流にあるのは彼女の愛の深さと優しさ。これは人間にとって基本的に大切なことですが、彼女はそれに加えて誰より自由奔放さが加わっているように思いました。

これからも慈しみのこころと自由自在な佇まいのまま生きて欲しいです。

彼女の保護犬の活動は有名ですがペットたちは人間からの愛情を素直に返してくれます。人間の異性とは違いますから。それでも良きパートナーに出会えたら残りの人生をともに歩んで欲しいと願うのは私だけではないと思うのですが………。