鴨長明の「方丈記」と今

「方丈記」は何度読んでも示唆に富む。鴨長明は平安から鎌倉初期にかけて混乱の時代を生きた歌人です。当時(平安時代)は地震など天変地異や大火、暴風そして疫病がはやる等の記述があります。今の時代にも通じる時代の状況があったと推測出来ます。

長明は京の都の人間関係の煩わしさを逃れて洛南の郊外で庵を組んで晩年は生活したようです。遁世の身として世の中を自由に観察、記述しています。流れるような文体は長明の文学的なセンスが光るところですが、何より人間社会を観察して幸福な生き方とは何かを思索しています。

大きな屋敷に住むことも、使用人が沢山いることも人間を幸福にはしない、と。京都の郊外の自然に囲まれた草庵で何者にも煩わされずに一人季節の移ろいの中で自然を友として生きる様は現代人のこころの憧れにも通じるような感想を持ちます。時代を超えても変わらないこともあると言うことがわかります。

人間にとって究極はこころの安らかさであり、そのためには心の豊かさをどう実現すればよいか、どのような生活を望めば良いか。コロナ禍の今、考えさせられます。今はやりのぼっちキャンプの平安時代版でしょうか。

ただぼっちキャンプはひとときの安らぎなので、生活そのものではないですが。人間関係が多くなったり物があふれてくると人間は煩わしさにさいなまれそうになるのでしょうか。余計な物は何もないのが一番かもしれませんが、現実的にはとても無理でしょう。せいぜいキャンピングカーで全国を巡ることぐらいでしょうか。