野田先生短歌より
「こころの旅路」(野田保著)を読みました。(発行はNHK学園)
著者は業界の大先輩で現在は悠々自適の生活を謳歌されています。キャリアとしては画業(画家)の方が長いと思いますが才能とは分野を問わないものだと感じます。つまり魂のレベルで何を思うか、あるいは何を表現したいのかと言うことが大切なんだと知らされます。
著者は本業を引退した後、2年かけて日本全国をスケッチの旅に出たそうです。スケッチをしながら短歌を詠むというのはなんとも羨ましい日々でしょうか。
高齢の奥様の介護の日々や、50代で乳がんを患った娘さんの看護の日々を独特の感性で切り取って描いています。まさに魂の発露を感じます。
短歌は季語がないので素人でも作れそうですが、体言止めとか古文の知識が必要になるので簡単ではなさそうです。
芸術作品に触れて多くの人が共感してくれたら、作者にとってこれに勝る喜びはないのではないのでしょうか。
文中から印象に残った短歌を掲げます。
*体力の限界日びに感じつつ描く百号は青春の色
*願わくばアルプスの見える信州でスケッチしつつおさらばしたし
*異常という名の付されたる猛暑でも日本列島は動かし難し
*とんとんと階段降りて玉ちゃんは両足そろえ朝の挨拶
*誰もみな一緒に歳をとるけれどこころの若さにてさがついてゆく
*一年を何とか無事に乗り越えて大河ドラマの最終回を観る
*葉の下の根は見せずして一輪の睡蓮の花気高く咲きぬ
*万物の寿命から見るとこの世には私は居ない満月の夜
*生き方と逝き方がある選択肢窓から見える隣家の明かり
*魂はどこにあるかと聞かれればじっとみつめる猫の目が答えてる
*昭和から平成令和と生き抜きて見えた世界は色即是空
いずれも素晴らしい短歌ばかりです。